第六章 封鎖された学園

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* 緊急放送 「えー、戦国時代と言えば、信長や秀吉が有名だけど、陸奥を誰が支配していたか知ってる人いるかな? そう、南部氏。だけど、領地が広大すぎて中央集権化が進まず、あっさり秀吉の軍門に下った。ここ、テストにぜったい出ないから覚えなくていいぞー」  教壇の上では、日本史の但馬先生が授業をしていた。青森出身の三十代半ばの男性教師。人懐っこい丸顔で、顎には無精ひげが生えている。得意の自虐的な青森ネタを繰り出すと、教室にまばらな笑いが起こった。  智也は窓の外をぼんやり見ていた。但馬先生の授業は嫌いではないが、さっきの森野佳織の言葉が気になって、教壇の声が耳に入らない。  理由もなく人を殺しているとしたらだって? どういう意味なんだろう? そんな人間がいるのか?  隣の席へそっと視線を流す。真剣な眼差しが教壇に向けられていた。机の上のノートには、きれいな字が書きつづられている。  勉強好きな彼女だが、特に日本史の授業は好きなようだ。外国で生活していると、日本がどんな国か訊かれることが多く、自然と日本の歴史や文化に興味が向くのだという。
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