第六章 封鎖された学園

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 部活には入らず、放課後はよく図書室にいる。思えば最初に交わした言葉も、彼女からの「図書室はどこですか?」という問いかけだった。  前に(なけなしの勇気を振り絞って)どんな本を読んでいるのか訊ねたら「歴史の本です」という答えが返ってきた。  智也の口から小さなため息がもれる。隣の机との距離はたったの五十センチ。なのにとても遠く感じる。  彼女ばかり見ていたら周りの連中に気づかれるので(特に斜め後ろの席の金本は、おばちゃん体質で勘が鋭い)、智也は引きはがすように窓に目を向けた。  うん?……  校門から白いマイクロバスとトラックが学校の敷地内に入ってくる。バスは二十人程度が乗れる大きさで、トラックは引っ越し業者が使うような2トントラックだ。  正門を抜けると、マイクロバスは西側のアスファルトをゆっくり徐行し、トラックは校庭に入り、野球部のグラウンドのそばで停まった。  野球とかサッカーの、どこぞの強豪校が遠征試合に来たのだろうか? だが、今日は平日だし、まだ授業中だ。第一、ウチには名門校がわざわざ試合に来るような強い部はない。
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