第六章 封鎖された学園

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 がらっと教室前方の引き戸が開き、黒いベストに上下の青い〝つなぎ〟のようなものを着た若い男が入ってきた。  身長は175センチくらい。ごつい黒の革ブーツに同色のひざ当てをはめ、右手に長方形の缶に取っ手をつけたようなT字に近い金属の塊――マシンガンを持ち、左手は大きな黒いダッフルバッグの革ハンドルを握っている。  教室がしんと静まる。本物の銃を目にして、生徒たちはこれが訓練ではなく、現実に起こっている事件なのだと改めて理解したようだ。 「警察です。先ほど校内放送で伝えましたが、犯人が校舎内に潜伏しています」  発声がしづらいのか、ダッフルバッグを教壇の上に置くと、空いた左手で顔の下半分を覆うフェイスマスクを顎の下にずらした。 「まだ犯人は確保できていません。教室の外には出ないでください」  眉毛のくっきりした顔立ちの整った精悍な青年だった。思ったより若い。いって二十歳、少年のようにも見える。  こんなときにと言うべきか、いや、こんなときだからこそか、女子の間にふわっとした空気が生まれ、緊迫した空気が緩んだ。
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