第六章 封鎖された学園

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「外に出してくれ!」  教室前方の出入り口から怒鳴り声が聞こえた。黒王子こと野球部の山崎だ。警官と押し問答をしている。 「妹が下の教室にいるんだ。すぐ下の階なんだ。会いに行かせてくれ」  携帯に出ないので、安否の確認に行きたいようだ。兄妹仲が良く、妹思いの山崎は心配でならないのだろう。ただでさえ直情型の山崎は、いったん思い込むと猪突猛進する癖があった。 「だめです。外は非常に危険です。教室から出ないでください」  若い警官は同じ言葉を繰り返す。但馬先生は警官のそばに立ち、興奮する教え子を懸命になだめようとしている。  前に立ちはだかる警官を「どけ!」と山崎は強引に押しのけ、バリケード代わりに積み上げられた机を崩しはじめた。グローブをはめた警官の手が、それを阻止しようと、山崎の肩にかかった。
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