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「俺にさわるな!」
激昂した山崎の両手が警官の胸ぐらを掴んだ。二人がもみ合いになる。
野球部のエースは体格や腕力で警官にひけをとらない。相手も生徒を怪我させるわけにいかず、力を控えていたのだろう。
振り回されて教壇へ投げ飛ばされたのは、警官の方だった。黒板の下に背中をしたたかに打ち、端正な顔がゆがむ。
ざわ、という声にならないどよめきが教室に広がった。
山崎が息を荒げたまま、自分が投げ飛ばした相手を見下ろしている。その手には、破れた青い布地があり、〝SIT〟という白い文字が見てとれた。
智也は席から立ち上がった。そして見た。
破れるはずのない防弾ベストの生地が破れていた。片側の左胸だけ、中身がむき出しになっていた。ポケットのような袋に、陸上のバトンを思わせる〝グレーの筒〟が何本もささっていた。
あれは――
見てはいけないものを見てしまったように、智也の目に怯えが走る。
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