第六章 封鎖された学園

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 この三か月の間、テレビやニュースで何度〝それ〟を見せられただろう! 芹沢睦美が実際に着ていた自爆ジャケットを再現し、マネキンで威力を映像で見せた動画もあった。  日本国民全員が、今やちょっとした爆発物評論家だった。だから、見間違えようはずがなかった。切断された短い鉄パイプを思わせる灰色の筒は――爆弾だった。  水を打ったように教室が静まり返る。  山崎も、但馬先生も、声を失っていた。みんな思っていたに違いない。彼は警官だ。凶悪犯の反撃に備えて爆発物を携帯していただけだろう。  防弾ベストの下に隠すように仕込むのは、いかにも不合理だったけれども、それでも無理やりに思い込もうとした。あり得ない話ではないと。  むくりと〝警官〟が教壇の上で立ち上がった。近くにいた山崎と但馬先生が、ひるんだように後ずさる。
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