第六章 封鎖された学園

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 男は膝のプロテクターについた埃を手で振り払った。胸に半分残っていた青い布地をビリビリと引き裂き、うっとうしいゴミでも捨てるように教室の床に放り投げる。  防弾ベストのポケットには、爆弾と思しき灰色の筒が、右胸に六本、左胸に六本、合計十二本ささっていた。 「申し訳ありませんが――」奇妙に澄んだ目で山崎を見つめる。「みなさんを外に出すわけにはいきません。私も命令を受けています」  右手に握られていたマシンガンがすっと持ち上がり、黒い銃口が少年の胸にポイントされる。山崎の口がすうっと息を吸い込む。目の下の筋肉が引きつっている。 「や、山崎!」  見かねた但馬先生が二人の間に割って入った。 「今は警察の人の言うとおりにしよう。妹さんはきっと無事だよ。――あの、お巡りさん、他の教室にも警察の方が行ってくれてるんですよね?」
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