第六章 封鎖された学園

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「先生、あのテレビはつけられますか?」  グローブをした左手が、教室の天井を指さした。  黒板の横、教室南西の隅に、50インチの薄型テレビが吊り下げられていた。ICT(情報通信教育)の一環として導入されたもので、英語のリスニングなど、授業で活用されていた。 「あ、はい」  但馬が教卓の下にあるリモコンをあわてて取り出し、テレビの電源を入れる。一般の地上デジタル放送は見られない設定なので、信号が入っていないことを示すブルースクリーンが表示された。  不意に映像が切り替わった。  場所は放送室だ。昼休みに放送部が自分たちで作った番組を流すのですぐわかった(バスケ部が地区大会で入賞したとか、顕彰(けんしょう)報告もここでされる)。  見慣れた白い長机とパイプ椅子が見える。椅子には誰も座っていない。  だが、いつもと明らかに違う点が一つあった。
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