第六章 封鎖された学園

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 背後の白い壁を見た智也の目が、ぎょっとしたように見開かれた。周りの生徒も気づいたのだろう。所々で身じろぎする気配や緊張した息遣いがする。  壁に〝旗〟が貼ってあった。  国旗サイズの赤い布地に、交差する長い剣と爆弾らしき絵が描かれている。その忌々しい模様は、テレビやニュースで繰り返し見て、嫌でも脳裏に焼き付いていた。  あの旗は――まさか――。  その単語が形を結ぶ前に、画面の外から人影が現れ、そちらに意識が奪われた。  年齢は十六、七歳。自分たちと同じ高校生だろうか。顔立ちの整った美しい少年だった。  クラスで言えば、サッカー部の新田に似ている。白王子の弟といった感じ。だが、もっと透明感のある印象。  青いつなぎの上にジャケットを着ていた。防弾ベストのカモフラージュはせず、灰色の筒がむき出しになっている。机の上に出した右手の甲に、黒いタトゥーのようなものが見えた。  特徴的なのは髪の毛だ。金髪をオールバックになでつけ、襟足を長く伸ばした一風変わった髪型。肌の白さも含め、その容姿は外国のロックシンガーを思わせた。
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