第六章 封鎖された学園

60/77

818人が本棚に入れています
本棚に追加
/643ページ
 言葉の意味を咀嚼(そしゃく)する時間を与えるように、いったん間を置く。それから、再び〝国民〟に語りかけた。 「諸君は『蠅の王』という本を読んだことがあるだろうか? 英国の作家、ウィリアム・ゴールディングの小説だ。飛行機が墜落し、無人島に置き去りにされた少年たちが、ともに手をたずさえ、ときに争い、自分たちの王国を打ち立てようとする話だ」  そんな美しいあらすじだったろうか? 現国の授業で先生が内容に少しふれたが、理性をなくしたガキどもが、人間狩り(マンハント)に狂う陰惨なストーリーではなかったか? 「私が理想とする国家像もそこにある。我が国は、彼らのようにすべてを若い世代によって決める。国家運営にかかわる重要事項は、幹部による特別委員会が意思決定機関となる。二十歳以上の人間は我が国の国民とは認められない」  智也はあ然とした。何を言っているのかさっぱりわからない。本当に教室自爆テロクラブなのだろうか? 頭のイカれた模倣犯や愉快犯ではないのか?
/643ページ

最初のコメントを投稿しよう!

818人が本棚に入れています
本棚に追加