815人が本棚に入れています
本棚に追加
/643ページ
* 三年後
三人掛けの優先席の真ん中に、二人の白髪の老人に挟まれて、学生服姿の少年が座っていた。
年の頃は十五、六歳。しゅっと伸びた眉の下に、冷たく冴えた眼差し。整った顔立ちといっていいが、どこか大人びた表情をしている。
紺色のピーコートを着て、袖口からは黒い手袋がのぞいていた。耳にイヤホンをつけるでも、スマホを見るでもなく、じっと前を向いている。
平日の朝七時半、電車内はぎゅう詰めというほどではないが、座席はすべて埋まり、立っている乗客も多かった。
十月に入り、寒さが深まってきたせいか、コート姿やマスクをしている人の姿も目についた。
最初のコメントを投稿しよう!