第六章 封鎖された学園

69/77

818人が本棚に入れています
本棚に追加
/643ページ
 黒いパンプス、紺のスカート、白いワイシャツ。ほつれた髪の毛の下、白眼がぎょろりと飛び出て、口からでろんと赤い舌が垂れている。顔に見覚えがあった。  現国担当の斎藤先生だ。 〝こより〟のようによじられた黄色いカーテンが、女教師の顎の下に食い込んでいる。落下のショックで骨が折れたのか、顔が奇妙な方向に傾いている。  カーテンを首に巻かれて突き落とされたんだ!  やった人間は言うまでもない。上階の三年の生徒たちだ。窓の外で、〝絞首刑〟にかけられた女教師の身体がぶらんぶらんと揺れていた。濡れた失禁の痕が足の内ももを伝い、滴となって落ちている。  これが僕たちの戦争の始まりだった。
/643ページ

最初のコメントを投稿しよう!

818人が本棚に入れています
本棚に追加