第六章 封鎖された学園

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* 失踪  話は三日ほど前に戻る。  週末の午前中、道の両側に似たような家が立ち並ぶ住宅街を、茶色のピーコートを着た少年――新堂拓巳が歩いていた。  私鉄沿線の駅から徒歩で二十分ほど、閑静な町並みに人通りはまだ少ない。駅から来る途中、キックスケーターに乗った小学生ぐらいの女の子二人とすれ違っただけだ。  空には雲が低く立ち込めていた。二月に入って寒さが増し、空気は冷たく乾いている。吐く息も白い。拓巳はいつもの革手袋に加え、マフラーを首に巻いていた。  オフホワイトの壁の一軒家が見えた。  白木のドアのそばに傘立てが置いてある。アルミの郵便受けには新聞がささったままだった。二階の西側には小さなバルコニーが張り出している。  玄関横の駐車スペースは空だった。前に来たときには軽自動車が停まっていた。  拓巳は東側にある二階の窓を見上げた。カーテンがかかっていて、中の様子は見えない。
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