第六章 封鎖された学園

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「夫とも相談したのですが、もう少し様子を見てみようと……。マスコミの方に知られると、大事(おおごと)になってしまいますから……。とりあえず、今は夫が心当たりのありそうなところを探しに行ってます」  もう二度と、世間の注目を浴びたくない気持ちはわからないでもない。立てこもり事件で人質になった少女が家出。マスコミの格好の餌食だ。  だが、何か様子がおかしい。娘が失踪したことへの不安だけでなく、顔におびえの色がある。警察に届け出ないのは、他にも理由があるのではないか。 「ここです――」  白木の片開きの室内ドアの前に母親は立っていた。『AKANE』とローマ字で書かれたウッディなプレートが、扉に紐で吊り下げられている。  母親の手がドアを押し開いた。
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