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ソレでも、首を振り続ける。不安から震えも止まず、怯えから顔も歪む。きれいな涙が次々とながれ、私の肩を掴んでいた手は、頬に添えられた手と手首に触れる。
魔法陣のキチキチとなっていた音は今や、ギチギチと不気味な音を立て、眩い光は私達を消さんとばかりに強くなっている。眩しさのあまり周りは見えず、目を細めてしまう。
時間が無い。でも、彼女の不安を少しでも軽くしよう。
私の命が消えたとしても、愛する人も、心配する家族も今はいない。でも、彼女には家族も恋人も居ると聞いているから、生きて此処(この世界)に帰ってこなきゃ。たとえ存在がなかった事にされ、居場所が無くても、向こうで幸せになれる可能性も有るのだから。
「朝藤さん。さっき貴女が言ってたよね。困った人が居るなら助けたいって。それなら、救ってあげて。私も側に居るように努力する。だからね、先ずは生き残ろう?自分が無事でないと、その先なんて何も出来ないから。」
ね?っと微笑み、泣きじゃくる彼女を励ます。
彼女は目を合わせたままコクコクと小さく何度も頷く。そして、落ち着くように深呼吸を繰り返し微笑み返した。
「うん!良い顔!!」
それを見て私も無理やりニカっと笑い、さらに元気付けようと大きな声を出す。私も覚悟を決めなきゃ。例え私が消えても、落ち着いた彼女ならやっていける。安心して逝ける。そして、それを朝藤さんに気付かせない。
生き残れたら、この命は彼女のために使おう。例えそれが泥にまみれようと、罪を被ろうとも。
覚悟を決めた時、魔法陣は待ちに待ったとばかりに私達2人ごと女子更衣室から消え去った。
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