2 切なくも楽しい春の思い出

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 休憩がてらに百円ショップに寄って、500ミリリットル入りの冷たいコーラを一本購入。  温くなる前に、三人で回し飲みをする。  蓮花、香奈、私の順番で。 「そんなに飲んだらダメだよ」 「ごめんなちゃい」  おどけた顔で香奈に向かって謝った蓮花は、半分以上も飲んでしまった。 「謝ったって遅いんだよ!」  香奈に厳しい口調で言われた蓮花は、涙目になってしまった。  こういうことは、度々ある。  悲しいことだけど、仕方がない。  一本しか買わない私のせいでもある。  それでも、私は決してお財布の紐は緩めない。   「香奈は、蓮花のお姉さんでしょ。もう少し、お姉さんらしく振舞いなさい」 「う、うん……」 「残りは全部飲んでいいから」 「ほんと?」 「うん」 「やったあ!」  喜びの雄たけびを上げた香奈は、嬉しそうな顔でコーラの残りを飲み始めた。  その間に、私は蓮花に言って聞かせる。 「自分の分がなくなっちゃったら、悲しいでしょ?」 「うん、悲しい」 「次からは、三分の一を飲むようにしなさいね」 「うん、わかった」 「また今度、買ってあげるから」 「うん!」  蓮花は気を取り直した様子で、口笛を吹き始めた。  まだ3歳と4歳の女の子。  私の教えをすぐに忘れてしまう。  甘やかしてもダメ。厳しくしてもダメ。ほったらかしにしてもダメ。  教育は難しいと、私はつくづく思う。
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