2 切なくも楽しい春の思い出

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 通りを行き交う車に気をつけながら、ゆっくり歩き進めていくと、こども自然公園に着いた。  緑豊かな森に囲まれた、こども自然公園に来たのは、これで三回目になる。  残念ながら、家族で訪れたことはない。以前の二回とも、姉妹三人だけで訪れた。  家の近所の公園より、遥かに桜の樹が多い。  どの桜の樹も満開に咲き誇っている。  薄ピンク色の桜の花びらがぎっしり。  例えるなら、桜の銀河。  実に見事で美しい。  遥々歩いてきた甲斐がある。 「どこでお花見しようか」  公園の入り口付近で立ったまま、三人で作戦会議。 「今日は、奥の方まで行ってみない?」 「そうね」 「そうしよう」  私も蓮花も、香奈の提案に賛成した。  なるべく人の少ない場所でお花見を楽しみたいから。それに、家族連れの姿はあまり見たくない。  香奈も蓮花も、私と同じことを思っていると思う。  朝から多くの人で賑わいを見せている、こども自然公園はかなり広い。  いくつも枝分かれしている散歩道をぼんやり歩いていると、迷子になってしまうほどの広さ。  私は迷子になっても大丈夫だけど、香奈と蓮花が迷子になってしまったら、大変。 「私の手をしっかり握ってるのよ」 「うん!」 「絶対に離さないよ!」  香奈は私の右手、蓮花は私の左手をぎゅっと握り締めた。  小さな手のひらから、命の温もりが伝わってくる。  ただ森の中を歩くだけだけど、何があっても絶対に離さない。
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