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通りを行き交う車に気をつけながら、ゆっくり歩き進めていくと、こども自然公園に着いた。
緑豊かな森に囲まれた、こども自然公園に来たのは、これで三回目になる。
残念ながら、家族で訪れたことはない。以前の二回とも、姉妹三人だけで訪れた。
家の近所の公園より、遥かに桜の樹が多い。
どの桜の樹も満開に咲き誇っている。
薄ピンク色の桜の花びらがぎっしり。
例えるなら、桜の銀河。
実に見事で美しい。
遥々歩いてきた甲斐がある。
「どこでお花見しようか」
公園の入り口付近で立ったまま、三人で作戦会議。
「今日は、奥の方まで行ってみない?」
「そうね」
「そうしよう」
私も蓮花も、香奈の提案に賛成した。
なるべく人の少ない場所でお花見を楽しみたいから。それに、家族連れの姿はあまり見たくない。
香奈も蓮花も、私と同じことを思っていると思う。
朝から多くの人で賑わいを見せている、こども自然公園はかなり広い。
いくつも枝分かれしている散歩道をぼんやり歩いていると、迷子になってしまうほどの広さ。
私は迷子になっても大丈夫だけど、香奈と蓮花が迷子になってしまったら、大変。
「私の手をしっかり握ってるのよ」
「うん!」
「絶対に離さないよ!」
香奈は私の右手、蓮花は私の左手をぎゅっと握り締めた。
小さな手のひらから、命の温もりが伝わってくる。
ただ森の中を歩くだけだけど、何があっても絶対に離さない。
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