2 切なくも楽しい春の思い出

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 至る所に咲いている桜の花びらを見つめながら、三人で静かな森の中に足を踏み入れた。  長い冬に耐えて、緑の葉を身にまとい始めた樹木たち。どの葉も生き生きとしているように見える。  空気が最高に美味しいし、命の息吹が感じられる。  私のすぐ後ろにいる香奈と蓮花の手を握り締めながら、勾配のきつい山道を歩いていたところ、どこからか、カサカサと木の葉の音が聞こえてきた。  何か動物がいるのだろうか。  私は山道の途中で立ち止まり、カサカサと音のする方に目を向けた。   「あそこにリスがいるよ!」  いち早く見つけた香奈の叫び声が森の中にこだまする。 「どこ! どこ! どこにいるの!」  両目を大きく見開いた蓮花の声も森の中にこだまする。 「あそこだよ!」  香奈がリスのいる方に向かって指を指した。  私は目を凝らしながら、香奈が指を指した方に目を向けた。  地上から、三メートルくらいの高さの枝の上で、何やら赤い木の実を食べている。 「すっごく可愛いね!」  蓮花が叫んだ瞬間、赤い木の実を食べていたリスは高い枝へと移っていき、どこかに姿を隠してしまった。 「あー、逃げちゃった」  香奈が残念そうな顔で言う。 「またリスと出会えたらいいね」 「うん!」 「リスちゃん! また出てきてね!」  香奈も蓮花もニコニコ顔。  二人とも動物が大好きだから。  ゴキブリは大の苦手。私もだけど。  森の中を歩くと、こういうことがあるから楽しい。
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