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リスがいないか目を凝らしながら、人気の少ない静かな森の中を進んでいくと、絶好のお花見ポイントに着いた。
案の定、人は少ない。
家族連れの姿はちらほらと見受けられるけど。
「早くお弁当を食べようよ!」
私がレジャーシートを広げた途端に、香奈と蓮花が口を揃えて言う。まるで意思疎通ができているかのように。
時計を持っていないので、正確な時間はわからない。
樹々の間から見える太陽の角度からすると、まだ九時くらい。
お弁当を食べるには、いくらなんでも早すぎる。
今、食べてしまうと、お腹がペコペコの状態で帰り道を歩くことになってしまう。
「もう少し経ってからにしようか」
「もう少しって、どれくらい?」
香奈がすかさず私に尋ねる。
「お日様が真上に上がるまで」
「それじゃあ、いつもと同じ時間じゃん」
香奈が両手でお腹を押さえながら言う。
「そんなに待ったら、お腹がぺったんこになっちゃうよ」
蓮花も両手でお腹を押さえながらアピール。
「じゃあ、もう少し早く食べようか」
香奈と蓮花のアピールに耐え切れず、私は折れてしまった。
「うん!」
元気な声で返事をした香奈は、リュックサックを背中から降ろして、レジャーシートに座った。
「お腹がぺったんこにならないうちにね!」
嬉しそうな顔で言った蓮花も、レジャーシートに座った。
ようやく落ち着いたところで、お花見開始。
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