2 切なくも楽しい春の思い出

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「ご馳走様でした」  三人揃って食後の挨拶。 「お腹一杯になった?」 「なった!」  両手を高々と上げた蓮花は満足げな表情。  香奈は、少し物足りなさそうな顔をしている。   「桜の花びらって、美味しいのかな?」  香奈が物欲しそうな顔で私に尋ねてきた。  桜の花びらは、私は食べたことがない。なので、どんな味なのかわからない。  ガムのように甘ければいいなって思う。 「んんー、どうだろうね。試しに食べてみれば?」 「じゃあ、食べてみる」  香奈はレジャーシートの上に落ちている桜の花びらをそっと指で摘んで、一気に口に放り込んだ。 「どう? 美味しい?」 「んんー、あんまし美味しくない」 「そっか。ちょっと残念だね」 「うん」  桜の花びらを味わったばかりの香奈の顔を見ていて、私は思った。  美味しかったら、みんな食べていると思う。美味しかったら、桜の樹が大変なことになってしまう。  だから、桜の花びらは美味しくないほうがいい。  やっぱり、桜は目で見て楽しむもの。
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