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「ご馳走様でした」
三人揃って食後の挨拶。
「お腹一杯になった?」
「なった!」
両手を高々と上げた蓮花は満足げな表情。
香奈は、少し物足りなさそうな顔をしている。
「桜の花びらって、美味しいのかな?」
香奈が物欲しそうな顔で私に尋ねてきた。
桜の花びらは、私は食べたことがない。なので、どんな味なのかわからない。
ガムのように甘ければいいなって思う。
「んんー、どうだろうね。試しに食べてみれば?」
「じゃあ、食べてみる」
香奈はレジャーシートの上に落ちている桜の花びらをそっと指で摘んで、一気に口に放り込んだ。
「どう? 美味しい?」
「んんー、あんまし美味しくない」
「そっか。ちょっと残念だね」
「うん」
桜の花びらを味わったばかりの香奈の顔を見ていて、私は思った。
美味しかったら、みんな食べていると思う。美味しかったら、桜の樹が大変なことになってしまう。
だから、桜の花びらは美味しくないほうがいい。
やっぱり、桜は目で見て楽しむもの。
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