2 切なくも楽しい春の思い出

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「私の娘も、この春から小学校に入学するのよ」 「そうなんですか」 「あそこで遊んでる女の子よ。お父さんと一緒にね」  子供だけでお花見をしている私たちを見ていて、察しがつかないのだろうか。 「妹さんたち、元気がないようだけど、大丈夫?」  香奈と蓮花が元気をなくしてしまったのは、あなたのせいですよ。とは言えない。 「はい。大丈夫です。心配してくれて、ありがとうございます」  私は作り笑顔を浮かべて、お話好きのおばさんに向かって頭を下げた。 「ランドセルは買ってもらったの?」 「いえ、まだです」 「最近のランドセルは高いからね」  高いのは知っています。  私は何も言わなかった。。 「どうやら、お邪魔だったようね」 「いえいえ」 「お花見を楽しんでね」  お話好きのおばさんはそう言うと、家族の元に戻っていった。  娘さんと旦那さんと一緒にレジャーシートに座ってお弁当を食べている。  重箱に入ったお弁当。見るからに豪華そうなお弁当。  正直なところ、目が痛い。  あのおばさんは、別に何も悪くない。  悪いのは、私たち三姉妹の母親。  それはわかってはいるけれど……。
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