冷たい雨と懐中電灯

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ドタドタと大きな足音が、すごい勢いで近づいてくる。 塔子は駆け出した。もう足音を隠す必要はない。 先を行く女性も走り出した。鬼ごっこでもしているみたいに、楽し気に笑っている。 冗談じゃない。塔子は必死だった。 「殺して、もう二度と生き返れないように、切り刻んでやる!」 塔子は急ぎ過ぎて、壁にぶち当たる。 あれ、廊下はここで行き止まりだ。どうすれば? あの女性は?  懐中電灯を振り回すと、横に階段があった。上 の踊り場から、女性が手招きしている。 階段を二つ飛ばしで駆け登り、階上にあがった。 広々としたロビーに出る。 ここは、やっぱりホテルなんだ。今は、猟奇殺人鬼の処刑場と化しているが。 先導してくれた女性が、正面の大きな扉の前で指をさしていた。そこが、出口なの? 「この屋敷から出られると思うなよ、ブスメガネ!」 猟奇殺人鬼の声が、すぐそこから聞こえている。塔子は、重い扉に体重をかけて押し開けた。
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