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下駄箱に、上履きがなかった。
またイタズラだ。塔子は、ため息をつく。
上履きの代わりに、折れた卓球のラケットが入れられていた。
くだらない暗号。塔子は、靴下のまま体育館の第二倉庫へ向かった。
上履きの隠し場所は、すぐにわかった。
天井の梁に引っかけられている。
それを取るためには、おあつらえ向きに置かれた折りたたみ椅子に上らなければならない。
彼女は椅子に乗って、梁へ手を伸ばす。
すると、ちょうど眼前に、綱引きのロープが垂れ下がっていた。
当然、ロープの先には輪が作られている。首吊り自殺用の綱。
「どうしても、私の首をくくりたいらしいわね・・・」
上履きをつかもうとつま先立ちすると、折りたたみ椅子に力がかかり、留め金が外れた。
椅子が壊れ、塔子は盛大に尻餅をついた。
「痛たたぁ・・・」
この倉庫にある道具なんて、そもそも全部壊れていると認識すべきだった。
塔子が倒れた振動で、梁から上履きが転げ落ちる。
そして、彼女の頭の上に降ってきた。右足が、コン! 左足が、コン!
彼女は、ひきつった笑いを浮かべなかった。
奥歯を噛みしめて、首吊りロープをにらみ付けた。
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