懐中電灯と弔いのチョコレート

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男が、電動ドライバーと金具を掲げて見せる。 「ああ、鍵を取り付けているんだ。内側から、簡単に開けられないように。まあ、無駄手間になるだろうけど」 塔子は「そう」とだけ返した。 今度は、男から尋ねた。 「そっちは、ひとり? 警察は?」 塔子は首を横に振る。 「で、ひとりで何しに来たの? やっぱり、殺されに来た?」 「違う。私のスマホを返してもらいに・・・」 「なるほど。大した度胸だ。ちょっと待ってろ。今、取ってきてやる」 屋敷の中に消えようとする男を、塔子が引き止めた。 「それから・・・」 「それから?」 塔子がバッグの中から、古びた懐中電灯を取り出して見せた。 男は深くうなずいて、「だから逃げられたのか」と納得している。 塔子は、男に向かって尋ねた。 「こういうの、他にもあるの?」 猟奇殺人カメラマンは、ニヤリと笑って答えた。 「あるよ、たくさん。見たいか、ブスメガネ」 〈 つづく 〉
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