いわれなき説教と扇風機

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白山浦高校二年D組の教室には、四日前から三つ空席が続いていた。 白川千絵と、その取り巻きの柏原久美、大城正美の三人だ。あの出来事以来、体調を崩しているらしい。 うるさ型がいないとはいえ、小原塔子への嫌がらせが止むことはない。 今日は机の上に落書きがされていた。 『キモイ・ウザイ・死ネ・消エロ・出テイケ・バカ・ブス・ドブス・ゲロブス・クソブス・・・』 机の表面は、びっしりと細かな字で埋め尽くされている。 しかも、油性マジックのクリア色で書かれているから、先生から気づかれることはない。 こんなくだらないアイディアと手間、相当なヒマ人によるものだろう。 「あれ、小原さんて、どんなシャンプー使ってるの?」 塔子が購買のパンを口の中に押し込んでいると、背後から野村かほりが声を掛けてきた。 背中までのゴワゴワの髪を、ただ結んだだけ。当然、シャンプーは、ホームセンターの特売品だ。 そんな塔子の髪に触れて、野村かほりは言葉を続けた。 「いいでしょ、小原さんのシャンプー教えてよ。こんな汚い髪質になるものなんて、絶対買わないようにしたいの!」 彼女の侮蔑に、クラスメイトのみんながケタケタと笑った。
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