いわれなき説教と扇風機

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野村かほりを端的に説明するなら、クラス一番の美女。 読者モデルとして、何度かファッション誌に掲載されたことがある。 小顔に手足の長いスレンダーな身体。 腰までのサラサラ髪がトレードマークで、鼻の下の長い男子から羨望の眼差しを集めている。 噂では、男遊びが激しく、先輩、後輩、先生にまで誰かれかまわず手を付けるヤリマ・・・下品な言葉を使いそうになって、塔子は自分を戒める。 野村かほりは、塔子の髪を丸めたり、ねじったり、引っ張ったりと、もてあそび続けていた。 「小原さん、前髪ちょっと伸びすぎじゃない? あたしが切ってあげようか?」 いつのまにか彼女が手にしていたのは、キッチンバサミ。おもむろに、前髪に刃を当ててくる。 「やめてよっ」 塔子は、ハサミを振り払う。 「大丈夫。あたし、切り慣れてるから、可愛くしてあげるって」 離して。ちょっとだけ。やめて。平気だって。 そんな押し問答を繰り返しているうちに、キッチンバサミがジョキンッと音をたてた。 塔子の目の前に、大量の髪がバサリと落ちた。 「ほら、小原さんが暴れるから悪いんだよ。あたしのせいじゃないからね」
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