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野村かほりが、そそくさと立ち去っていく。
残されたのは、机の上に散らばった十五センチほどの髪の束。
クラスメイトからクスクスと笑い声が漏れていた。
トイレに駆け込んで鏡を見ると、右半分だけオンザ眉毛状態。
「これはちょっと、ひどいなぁ」
アンバランスな髪を、ヘアピンでなんとかごまかして教室へ戻る。
野村かほりは悪びれた様子もなく、週末の雑誌撮影のことを自慢げに話していた。
塔子は、そんな彼女をにらみつける。
そして、切られた髪の束を握りしめながら、小さくつぶやいた。
「私がいいカメラマンを紹介してあげようか?」
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