いわれなき説教と扇風機

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古めかしい洋館は、ほとんど掃除がされていない。 まだ日の明るいうちに訪れると、床がほこりまみれなのが分かる。 塔子は書斎にいた・・・処刑場ホテルの。 壁際の陳列棚に並べられた品々を眺めている。 書斎の前を通った猟奇殺人カメラマンが、彼女に目を止めて怒鳴った。 「何でお前がここにいるんだ!」 「いいじゃない、ちょっとぐらい見せてくれたって」 「勝手に屋敷に入ってくるんじゃない。そんなに殺されたいのか」 塔子は殺人鬼の言葉を無視して、アンティーク調の道具を眺め続けた。 「いいか、ここはお前なんかの来る場所じゃない。だいたい、何で警察に連絡しないんだ。ここで殺されかけてるんだぞ。それに、他の被害者も、人知れずここで切り刻まれてる。それを知ってて通報しないってのは、人としてのモラルに反してるんじゃないか?」 何で殺人鬼に説教なんかされなきゃならないの。モラルに反してる?  その言葉、そっくりそのまま返してあげるわ。 警察に連絡しないであげてるんだから、感謝されることはあっても説教されるいわれはない。 塔子は鼻で笑って、古めかしい道具のひとつを指差した。 「これは何?」
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