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男は呆れて、ため息をつく。
「見てわかるだろ、扇風機だ」
時の流れで退色したような、薄茶色の扇風機。四枚の羽根には、ビッシリとホコリがついている。
「あの懐中電灯みたいに、奇妙なチカラがあったりするの?」
「ああ、もちろん。こいつが起こす風は、なぜか腐敗臭がする。腐乱死体の香りだ」
何それ、気持ち悪い。たったそれだけ?
「それから、調子のいいときは、スイッチがオフになっていても、コンセントが抜けていても、回るんだ」
「へぇ」
殺人鬼は、思い出したように付け加えた。
「ああ、それと。こいつは、大好物があって・・・」
話を聞いた塔子は、扇風機を指さして言った。
「ねぇ、これちょっと貸して」
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