いわれなき説教と扇風機

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男は呆れて、ため息をつく。 「見てわかるだろ、扇風機だ」 時の流れで退色したような、薄茶色の扇風機。四枚の羽根には、ビッシリとホコリがついている。 「あの懐中電灯みたいに、奇妙なチカラがあったりするの?」 「ああ、もちろん。こいつが起こす風は、なぜか腐敗臭がする。腐乱死体の香りだ」 何それ、気持ち悪い。たったそれだけ? 「それから、調子のいいときは、スイッチがオフになっていても、コンセントが抜けていても、回るんだ」 「へぇ」 殺人鬼は、思い出したように付け加えた。 「ああ、それと。こいつは、大好物があって・・・」 話を聞いた塔子は、扇風機を指さして言った。 「ねぇ、これちょっと貸して」  ※ ※ ※ ※ ※
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