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「ねぇ、これ何の匂い? ホントに臭いんだけど」
他の女子から声があがった。まだ、この腐乱死体の匂いが扇風機から発せられているとは、誰も気づいていないようだ。
「やだ、本当に臭い」「ちょっと、気持ち悪い」臭気が更衣室に充満し、みんなが顔をしかめだした。中には、吐き気をもよおす者もいた。
「小原さんの匂いじゃない?」
誰かが言った。それに続いて、「ハチ、クソもらしてるんじゃねぇ?」と他の者が煽った。
「近づくな、馬鹿」「汚ねぇ、こっち来んな」とジャージやらタオルやらが投げつけられた。
塔子は、その仕打ちを甘んじて受け入れた。
そのとき、野村かほりは扇風機で髪を乾かしていた。
強風に、サラサラの長い髪がなびいている。
ところが、扇風機は突然、逆回転を始めた。
なびいていた髪が吸い込まれ、羽根に絡みついた。
「何これ、ちょっと! 痛い! 誰か助けて!」
古めかしい扇風機は、すごい力で髪の毛を巻きつける。
周りの女子が扇風機のスイッチをオフにしたが、回転は止まらない。
他の子がコンセントを抜いても、羽根は回り続けた。
「何で止まらないの!」
どうやら、今日は調子がいいようだ。
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