電気ポットと水色の上履き

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剛と柔、ゴリラとヘビ。 両極端な二人が、親友だというのだからタチが悪い。 休み時間になると、たびたびトイレでタバコを吸い合い、友情を深めているらしい。 「私・・・何も知らない」 塔子が首を横に振ると、八代和也が殴りかかってきた。 頬に当たる寸前で、荻野亮一が拳を止めてくれる。それにしても、すごい風圧。 「和也、殴っちゃダメだって。女の子の顔に痣でもできたら、どうすんの」 あれ、この人、紳士? そんな思いは、すぐに霧消する。 「痣があったら・・・先生にバレちゃうじゃん」 塩顔のヘビは、背後に隠し持っていた水モップを持ちあげる。 「せっかく綺麗な髪型になったんだ。ついでに、顔も綺麗にしてやるよ」 昨日の掃除に使われた生乾きの水モップを、塔子の顔にこすりつけた。 「やめてっ・・・」 抗う塔子を、巨漢ゴリラが羽交い絞めにする。 無抵抗な彼女の顔を、水モップがゴシゴシと濡らした。 「どう? しゃべる気になった?」
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