電気ポットと水色の上履き

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「そんなに、怒鳴らなくてもいいじゃない。窓よ。雨戸が簡単に開いたの」 殺人鬼は、「窓にも内鍵か」と歯噛みをしている。 「とにかく、さっさと帰りやがれ、ブスメガネ!」 どうやら、今日は機嫌が悪いらしい。しかし、売り言葉に買い言葉、塔子も苛立ちが口をついて出る。 「何よ! 馬鹿殺人鬼!」 「バカサツジンキ、だと!」 塔子の抑圧された思いが、噴き出してくる。 「そうよ。馬鹿で間抜けだから、女子高生に逃げられるなんて失敗をするのよ!」 「失敗? 俺は人生において失敗なんてしたことがない! ただ、女子高生に逃げられてしまうという方法を見つけただけだ!」 「何よ、それ? 意味わかんない!」 「知らないのか、低能ブスメガネ。『私は失敗したことが無い。ただ、一万通りの上手くいかない方法を見つけただけだ』これは、俺が尊敬する人物の言葉だ」 苛立ちは、加速する。 「はあ? 馬鹿じゃないの? そんな子供の言い訳みたいな言葉。だいたい、殺人鬼が尊敬する人物って、どんな極悪人よ!」 殺人鬼の目の色が変わった。 「よしわかった。そんなに死にたいのなら、殺してやる。今度こそ、ちゃんと殺してやるから、安心しろ!」
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