電気ポットと水色の上履き

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放課後、塔子は男子トイレの個室に隠れて、二人を待っていた。 ゴリラとヘビを。 きっともうすぐ、いつものように八代和也と荻野亮一が、隠れてタバコを吸いに来る。 準備は万端。ポットには並々と水を張り、ウォッシュレット用のコンセントを拝借してある。あとは、スイッチを入れるだけ。 二人は程なく殴り合いを始めるだろう。大丈夫。死なない程度で、スイッチを切ってあげるから。 五分と待たずに二人がやってきた。 個室扉の隙間から、二人が並んで窓際に立っているのが見える。 モクモクと白い煙が上がりだす。スイッチ、オン! 「千絵のやつ、学校は怖いから行きたくないってさ」 「お前がいつもそばについててやれば、怖がる必要もないだろ」 「え? え? 何で、俺が? 付き合ってるわけでもねぇし」 「いや、いや。前から言おうと思ってたけど、おまえと千絵のこと、もうバレてるから」 「はあ? いい加減なことほざくなよ」 「いや、いや。ラブラブ光線でまくりなんだけど」 「てめぇ、俺を馬鹿にしてんのか!」 ドスンと殴る音が聞こえた。電気ポットのお湯は、沸々と泡立ち始めている。
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