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「狼。
貴様本当に正規なのか?」
偶然にも規定空曹が考えたものと同じ呼び名で狼中尉を呼ぶ松井特務中尉。
同じ中尉でも正規が上官とされるのが海軍の常だが、飛行機の操縦となると話は全く別らしい。
「はい」
「嘘をつくな。
ペスコ野郎と互角の腕前を持つ正規がどこにいる?」
「ここにいます」
にこりともムスッともせずに淡々と件の中尉。
飛行眼鏡を透して見える両目が、まるで餓狼のそれのように鋭くギラギラして見える。
松井特務中尉は内心それにゾクッとしつつ、かろうじて教官の威厳を取り繕い続けるのであった。
そして口を開く。
「よし、ペスコは本職に任せて銃座に入れ狼」
「はい。
変わってくれ田宮」
「了解」
件の中尉と田宮と呼ばれた1空兵の搭発はそう言葉を交わし、田宮は搭発席に座り件の中尉は側方機銃の点検そして装弾を行う。
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