2017年冬。

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 昨年初夏にニィニィこと田島陽光が天寿を全うしたのを境に、一式翁は老後の心配をし始めているという。 海軍飛行学生の入校年月日を間違えたり、加賀に乗り組んでいた頃のペアの名を間違えたりした事が、一式翁が人生初の認知症診断を受けるきっかけとなったのではと推測する者もいた。 因みに一式翁が診断を依頼したのは、垣戸島の開業医高台柴三郎(たかだい=しばさぶろう)医師である。 高台医師曰く、自ら進んで認知症診断を受けに来る位ならまだまだ心配ないとのことであったが、一式翁がその説明に納得したのか否かは今のところ不明であった。 この高台医師という人物、一式翁の主治医であると同時に孫陸にとってはラジコンの師匠でもある。 垣戸島でも以外に知られていない事だが、孫陸は小学校3年生からラジコンを始めているのだ。 当時高台医師は符礼亜町小学校の校医をしており、当然小学生時代の孫陸がどんな境遇に在ったのかも知っている。 その高台先生が言うのなら…… ……と、孫陸は祖父の診断結果に納得していた。 つまり孫陸は高台医師と同じく、祖父の健康については本人に任せておくのが一番よいと考えているのだ。
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