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そして第3の壁。
それは主脚の収納と展開である。
零式艦戦や97式艦攻のような電気モーターではなく、96式陸攻では胴体中央付近にある手動式ハンドルを回し収納と展開を行うのでだ。
96式陸攻の主脚はタイヤを機尾方向に向ける形で収納され、収納時の状態を主翼に対し0度とした場合、機首方向に約100度の位置まで展開する。
45度辺りまでは離陸時の風圧が幾らか助けにはなるものの、45度から先は主脚自身の重さがもろにハンドルへとかかるのだ。
この時力を緩めたり油断したりしたら、ハンドルが猛烈な勢いで逆回転を始めてしまう事がある。
その時逆回転するハンドルに当たり手を骨折する者が出る事から、猛烈な勢いという例えが決して大袈裟ではない事が窺えた。
逆に着陸時は45度辺りまでは主脚自身の重さが助けとなり、風圧が主脚展開の妨げとなる。
しかし、この第3の壁については仮称一式ペアが乗ると些か話が違うようで…
「貸してくれ。
俺がやる」
陸攻はそう言うや否や些か強引に恩田一飛兵と交代し、彼がフウフウ言いながら両手で回していたハンドルを片手で易々と回してあっという間に主脚を収納してしまう。
そしてもう片方の主脚も…
お陰で規定2空曹は、副操席に陣取る松井教官から陸攻の分までどやされなければならなかった。
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