陸攻とリクコウ。

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搭乗員に促され丁度胴体後部の日の丸の位置にある乗降口から機内に入りつつ、小声で呟く嵐山。 巨大な葉巻を思わせる外見といいぶっとい胴体といい、親友を連想せずにはいられないのも無理はない。 やがて嵐山がベルトを締め終えた頃、叫び声を伴う事もなく回り始める2つのエンジン。 嵐山が座るのは主操席の後ろ機長席。 流石にグラスカステンのそれには譲るものの、温室のように大きな風防はなかなか眺めが宜しい。 尤も、今見えるのは追浜飛行場から少し離れた場所にある山々の稜線だけなのだが。 そして目の前の主操はカモメの翼のように開く風防を跳ね上げ、機外に身を乗り出しつつ左手で操縦装置を操作しながら機を滑走路へと誘導している。 (たんまり給金貰わな敵ん筈や。 1人何役やっとうねや… あれやったりこれやったり… まるで兵学校時分のわいらやんけ。 自分とおんなじ名前なだけあるわ)
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