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「へ?」
椅子を持って向かう俺の眼前にいる死神は目を見開いた。
……気は進まないが、状況が状況だ。躊躇はしてられない。
俺は自分の手に持つ椅子に力を込める。
「ッらぁ!」
そしてその椅子を水平に、死神へ目掛けて振り抜いた。
「わ!?」
死神はそう声を上げた。
だが、思いっ切り振り抜いた椅子は、彼女の中をすり抜けて素通りし、まるで空気を殴ったかのように、手応えが何も感じなかった。
「……くそ」
「……びっくりしたぁー。死神に攻撃するなんて、思い切ったことするねぇー。だけど、残念でした。死神はあなたたち人間とはそもそも次元が違う存在。今のあなたでは、私に干渉はできない」
手から椅子が落ち、俺はその場で膝をついた。試すことは全て試した。もう何も思いつかない。
一体、扉を開けるための、特別な方法とは何だ。何か懸念があるとすれば、机を完璧には調べていないことだ。
だが、本当にそれが正解なのか?
そう疑問に思いつつも、しかしそれしかないのなら、もう一度調べるしかない。
時間は、そろそろ1分20秒を下回りそうになっていた。
苦し紛れだが、重い足に力を込め、まだ調べていない空の机の中を探る。
だが、何かを得られるとは到底思えなかった。
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