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「あぁ、部長! どうもっす!」
俺は会釈をしながら部長に視線を向ける。
「あれぇ? 隼人に真桜。何してるワケよ?」
「何してるって貴方が飲んだ後の後片付けですよ」
「ほう。そうかそうか。そりゃあ済まないな。後で乳製品奢ってやんよ」
何故、乳製品限定なんだ……ッ。
「それはそうと、これ返すよ」
部長は鞄からゲームソフトのカセットを取り出した。
少し型の古いそれに見覚えがある。
つい最近俺がこの部屋に持ってきて部長に貸していたヤツだ。
「ああっ! どうでしたそれ! なかなか良いものでしょう」
「いやあ、実に良かったね。昔ながらの味わい深いグラフィックに何時間でも聞きたくなるような音が……ッ!?」
ソフト片手に近づいて来る部長の足元で鈍い音がした。
部長の足首が変な方向にぐねっている。
それはまだ良い。
あろうことか、ソフトが手放されていた。
放物線を描きながら宙を回転するソフト。
まるで十分の一にまで遅くなった時間。
放物線の描いた先にはマオーさんの手元があって。
――四秒後。ソフトは裏面カバー、中の機械、表面カバー、と息をのむ程華麗に三枚におろされ、奇しくも俺の嘆きの咆哮と共にマオーさんのハサミの過大とも思われた性能美は証明されたのだった。
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