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「ほらほら、早く! さっさとしないと日が暮れてきたら狼さんが来ちゃうわよ」
「狼さんが来るって……男は狼なのよって感じだとしたら安心してくれ。少なくとも俺はそんな夜更けに女の子を引っ掛けるような野蛮なタイプじゃないから」
「隼人君。もしかしてそっちの人?」
「違うわ。発想が高跳びし過ぎだ」
この世には狼かそっち系の人しかいないと思っているのか、この子は。
世の中には草食系男子というサバンナでいうガゼルみたいな人もいるっていうのに。
「ところで俺は何を手伝えば?」
「そうだね。ハサミは一個しかないから、まだ開いてない牛乳パックを手渡しで次から次へと私に渡してくれない?」
「はぁ。その工程要る?」
「まあ手元に取れる距離ならそうそうは要らないんだけど、数も減って来たらわざわざ動くの面倒くさいのよ。取りに行って座って切ってまた取りに行って座って切ってって何回もするの大変でしょ?」
「へいへい。じゃあ手元にあるのが少なくなってくるまで切り終えたやつの整理でもしておくとするよ」
こうして俺は引き出しからビニール製の紐を取り出し、マオ―さんが切り終えた牛乳パックを重ねて束ねていく。
刹那。空気が変わった。
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