三題噺

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 動き出したかと思うとマオーさんは手際よく牛乳パックを切り開いていく。  秒数にして4秒。  オリンピックの協議でもしも競技化したら間違いなく世界新記録ものだ。 (これがマオーさんの絶対的集中空間(ポッシブリティ・ワン))  マオーさんは普段はおバカな感じだけど、いざ集中モードになると極端に集中力を見せる。  レトロゲーでコンマ数ミリの間をちょこまかと動かさないとゲームオーバーになる物をしている時や、最難関のレベルのリズムゲーをしているとき、ここ一番で絶対に勝たないといけないという時などに人間離れをした力を発揮させていた。  この状態になると例え自分の隣でガラスのコップが落ちようが、窓が割れようが、もしかしたら人が倒れて白目を剥いていたとしても彼女は気にも留めないのかもしれない。  だからチームプレイをする時には頼もしく、対戦相手としては非常にやりにくい。  俺や部長でも歯が立たず、全国規模のレトロゲームの同志たちが集まる大会でも上位の成績を残す始末だ。  もっとも部長は少々おっちょこちょいなところがあって、対戦ゲームに関しては俺でも勝てるといえば勝てるのだけど。  彼女は言う。  ――人間に出来ないレベルの技術が出来ればゲームは勝つことが出来る。製作者も開いても人間なのだから、と。
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