きみの手を。

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「お腹すいた!」と早川がバイト帰りに嘆いてお腹を鳴らせば、「じゃあ、うちに寄ってく? 肉じゃがあるけど」と誘い、ご飯をご馳走することもあった。  自分の部屋に早川がいる、早川の手が自分の部屋を触る、その官能的なシチュエーション。幸せの極みだ。  早川を送り届けたあと、彼女の匂いと彼女の手が触ったところを思い出して、何度も果てた。  俺の性癖が特殊なことはわかっている。  けれど、誰かを傷つけたわけでもないのだから、別に悪いことではないと思っている。  他の男が「おっぱいがいい」「ケツがいい」というレベルで、俺は「手がいい」と言うだけだ。  手の綺麗な女を殺し、その手首を持ち歩くという性癖はない。  確かにモナ・リザの手は綺麗だと思うが、女の「生」も含めてこその「美」だ。  漫画の中の彼と一緒にしないでほしい。
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