きみの手を。

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 早川がうちでご飯を食べるようになってだいぶたってから、いつも通り送り届けようとしたとき、早川がいつもとは違い、なかなか玄関に来なかった。  様子を見に行くと、ソファに正座した早川がじいっと俺を見つめてくる。 「どうした?」 「あの、ね」 「うん」  話したいことがあるんだな、と思って俺もソファに座る。 「あの、原田くんが私を送ってくれるようになってから、だいぶ落ち着いたの。連絡先を渡されることもそんなに多くなくなったし、ストーキングも、なくなったと思う」 「そう?」 「うん、そうなの。でも、ほとんど毎日、私は原田くんに頼ってばかりで……その、何で、原田くんは私に良くしてくれるのかなって考えると、その」 「早川は鈍感だね。好きな子に尽くしたいのは男なら普通だと思うけど」  俺の言葉を聞いて、早川は真っ赤になる。耳だけではなく、指まで真っ赤になって。  あぁ、可愛い、と思う。 「俺が選んだ服を着て、指輪を身につけて、俺の作った料理を食べて、家に送るまで俺のそばにいる女の子を、好きになるなって言うほうが無理だよ」 「は、原田くん、あの、私も」
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