きみの手を。

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「俺は、奈緒の手が一番好きなんだ」  奈緒が俺の手を握ったまま、微笑んで頷く。  泣かないで欲しいのに、彼女の涙は溢れて止まらない。  そんなに泣いたら、笑われてしまう。  美緒にも、孫たちにも。 「おじいちゃんとおばあちゃんは仲がいいんだから」とからかわれてしまう。  奈緒はそれがあまり好きではないと知っていたけど、俺はやっぱり、ずっと奈緒と手を繋いでいたかった。  笑われても、からかわれても、奈緒の手に触れていたかった。 「奈緒」 「はい」 「俺はね、ずっと、お願いしたくてたまらないことがあったんだ」  しわくちゃになった奈緒が、「なぁに?」と聞いてくれるから、俺は、ようやく、あのときの計画を彼女に話すことにする。
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