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早川はものすごく地味な女子だ。
ボブより少し長めの黒髪に赤色の眼鏡、ユニクロのTシャツに、デニム。
可愛らしい格好とは程遠い出で立ちで、本人も気にして友達にコーディネートしてもらうこともあったみたいだが、ひと月でだいたい元の姿に戻る。
結局、赤色の眼鏡しか、可愛らしい要素は残らないのが半年ごとのサイクルだ。
そんな地味な女子、早川は、一点だけ、たぶん俺にしかわからない魅力を持ち合わせている。
「で、どうしたの? 課題を分担するのはあまり好きじゃないんだけど」
「課題じゃないよ。ちょっと原田くんにしか頼めないお願いがあって」
俺だけが叶えられる願いがあると言われたら、聞いてあげないと男が廃るだろう。
早川の両手がもじもじと動いている。
ぎゅっと握ったり、指をほどいたり。
ただのゼミ生の間柄に、緊張することなんて、何もないのに。
「聞くよ。どうしたの?」
「原田くんちの最寄り駅にコンビニがあるじゃない?」
「早川のバイト先の?」
「え、よく知っているね」
まぁ、最寄り駅のコンビニに同級生が働いていたら、普通なら気づく。
まして、その同級生は、同じゼミ生なのだから。
「よく行っているから」
「そっか。で、私のバイト先なんだけど、何ていうか、異常なの」
「異常?」
何の変哲もない、普通のコンビニだ。駅前ということで、常に忙しそうで大変だなとは思うけど。
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