きみの手を。

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「なんか、やたらと連絡先を手渡されるの」 「……」 「バイトに行けばほぼ毎回、連絡先か手紙を手渡されて。もう百通以上になっちゃって」 「……」  前言を撤回しよう。  早川の魅力に気づいていたのは、俺だけではなかったみたいだ。 「最近はストーキングまでされているみたいで、ちょっと怖くなっちゃって……できれば、一緒に帰れそうなら、帰ってもらえないかな、と。駄目かな?」 「いや、いいよ。今バイトもしていないし、早川の上がりの時間さえ教えてくれれば、送っていけるよ」 「本当!? ありがとう!」  早川は嬉しそうにパンと手を叩いて、笑った。  唇の前で拝むように重ねられた白い両手。  爪は綺麗に切りそろえられ、派手なネイルはされていない。ささくれやあかぎれもない。薄い産毛が見えるくらいだ。 「じゃあ、今日からお願いしていい?」 「いいよ。連絡ちょうだい」 「良かった! 帰る方向が同じ男子が原田くんしかいなくて……友達に相談したら、原田くんなら大丈夫だろうって」  たぶん、三宅か長尾あたりだろうな、その友達は。  まぁ、普段の行動が評価されているというよりは、人畜無害に見えるのだろう。信頼されているのだと、好意的に受け取っておこう。
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