きみの手を。

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「じゃあ、後で一週間分のシフト、連絡するね。本当にありがとう!」  早川が手を振りながら、棟の中へと消えていく。  早川が完全にいなくなったことを確認してから、弁当箱に目を落とす。  俺の目には、玉子焼きがあった箇所だけが映っている。  三宅も長尾も、俺を買いかぶりすぎだ。  早川にとっては、連絡先を渡してくる男たちと俺は、行動力があるかないかの違いがあるだけで、そう変わらない存在であるというのに。 「さて、指はどこに触れたかな」  隣の玉子焼きか?  それとも、ブロッコリーか?  でも、きっと、早川の指の味はしないだろう。それだけが残念だ。  あの白くて滑らかな手と指に舌を這わせて、存分に味を楽しめたらどんなに幸せか。  一本一本、舐(ねぶ)っても、十本も楽しめる。  舌で蹂躙して、水かきも、手のひらも手の甲も、手首まで味わい尽くしたい。  悲しいかな、それだけの妄想で勃ってしまう。  好みの女のタイプに「手の綺麗な人」と言って、たいてい「変態!」と罵られる俺は、早川の手に、恋をしている。  そして、俺は、早川に信頼されているというこの状況を利用して、とある計画を立てるのだった。
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