きみの手を。

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「ありがとう! 遅くなってごめん!」 「いや、大丈夫。ジムの帰りだから」  早川からのシフト表は、たいてい十七時か十八時から二十二時まで。夕方から夜のシフトらしい。  俺はジムで汗をかいて、シャワーを浴びたあとに早川を迎えに来ることにした。  店長には先に挨拶しておいた。店の前にいても、早川の迎えであり、不審者ではないので通報しないでくださいとお願いもしておいた。 「いい青年だねって店長褒めていたよ。バイトが欲しくなったら声かけてもいいか、って」 「早川の送り迎えができるなら、いいよ」  そのほうが安全といえば安全だ。俺にとっては。早川のことを近くで見ていられるし、変なやつから守ることもできる。 「今日は何通?」 「二通。少ないほうだよ」 「だろうね」  早川の家は、俺のアパートから少し離れている。俺のアパートまでの通り道ではない。  でも、別に構わないのだ。  今のところ、不審者はいない。けれど、遠くから見つめているだけかもしれない。  少しずつ人がまばらになっていく道を行く。 「何でかな。ほんと、不思議」 「モテ期じゃないの? 連絡取った人はいた?」 「いないよ! 怖くて、連絡なんて無理無理! モテ期なら、すぐ過ぎるかなぁ」  早川はモテ期だとしても嬉しくなさそうだ。三宅や長尾は欲しくてたまらないだろうに。
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