きみの手を。

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「でも、ごめんね。原田くん、彼女できたら言ってね。他の人探すから」 「うん、わかった。でも、いないうちは勝手に俺以外の誰かに頼んだりしないで」 「うん、そうする。お礼、させてね」  あ、今だ。  俺は、できるだけ平静を装って、計画の一部を遂行する。 「お礼はいらないから、一つお願いしてもいい?」 「え、なに? なに?」 「……手を」  立ち止まって、早川を見つめる。そして、右手を差し出す。 「――手を繋いだら、恋人のように見えないかな?」 「え?」 「そのほうが、ストーカーにはダメージを与えられるかな、と思って。早川が嫌ならやめておくけど」  早川は握手かと思って右手を出してこようとしたけど、すぐに引っ込めて左手で俺の右手を握った。 「……嫌じゃないよ」  夢にまで見た早川の手が、俺の手を握る。  するりと重ねられた左手。  柔らかな弾力。  すべすべで、しっとりとしていて、冷たいようで、熱い。  矛盾を内包しながらも、早川の手はやはり、最高に気持ちのいい完成品だ。  まったく、誰が作ったんだ? 神様か? だろうな。  俺は平静を装いながら、笑う。 「毎回、こうして歩こう。ストーカーが誤解してくれるように」  勃ってしまったのは、不可抗力なのだ。
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