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ベッドの近くに、小さなクリスマスツリーがある。その下に、ラッピングされた小さな箱が置いてある。
箱を開けると、イチゴのストラップ。携帯電話につけると、かなりかわいらしくなった。イチゴが好きだと私が言ったから、準備してくれたのだろう。裕二は外に出られないから、お母さんかお姉さんが買ってきてくれたのだろう。
嬉しい。
箱の下には、カード。
『親愛なるメリーさんへ。メリー・クリスマス』
綺麗な字だと思う。これも、お母さんかお姉さんが書いたのかもしれないけど。
カードをポケットにしまって、箱の上にリンゴを置く。けれど、箱からはみ出して落ちそうだったから、箱の横に置き直す。
「メリー・クリスマス、裕二」
空っぽのベッドを見て、私は携帯電話のイチゴストラップを握る。
今頃、手術中だろう。移植は時間がかかるというから。
「クリスマスプレゼント、気に入ってくれたかしら」
ノワールは「連行」し、私は「保留」した。
お姉さんの魂はまたいつか戻ってくる。それで、いいでしょう?
裕二は泣くかもしれないけれど。
私を憎むかもしれないけれど。
必要がなくなった肉体の一部を、最大限に利用して――裕二は生きるのよ。
メリー、クリスマス。
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